アイルランド英語の発音 (3)
Last update December 31, 2024
基本的な特徴
ロウティック (
Rhotic
) の「
r
」
アイルランド英語の「
r
」の発音もスコットランド英語やアメリカ英語と同様に、母音の後に「
r
」のスペルがあれば、その
/r/
の音をすべて発音するという
rhotic
(ロウティック)
アクセントですが、その
/r/
の音は、アメリカ英語のような
接近音 (
Alveolar approximant
)
よりもむしろ
「
r
」の歯茎はじき音化 (
Alveolar flap
)
が一般的です。話者によっては
「
r
」の口蓋垂音化 (
Uvular trill
)
で発音される場合もあります。
th の閉鎖音化
舌先と歯の摩擦による
/θ/
や
/ð/
の発音が、歯や歯茎の裏側で止める閉鎖音として発音される
th
の閉鎖音化 (
Th-stopping
)
がみられます。そのため、これらの音がそれぞれ
/t/
や
/d/
に近い音になり、
thank you
が「タンキュー」、
brother
が「ブラダー」のように聞えます。
明るい
/l/
の発音
イギリス英語が明るい
/l/
と暗い
/l/
を使い分けるのに対して、アイルランド英語では、その位置にかかわらず、すべての
/l/
が明るい
/l/
で発音されます。これら2種類の発音については、
明るい
/l/
と暗い
/l/
(
Light /l/ and dark /l/)
をご覧ください。
「
t
」の無声歯茎摩擦音化
/t/の発音は、単語の最初に来る場合を除いて、
破裂音
ではなく、歯茎に舌先をつけて出す無声歯茎
摩擦音
として発音される傾向が一部みられます。具体的には、
th
の
/θ/
の音を出す場合、舌先を歯の間にはさんだり歯と摩擦させたりして出しますが、その舌先を引っ込めて歯茎の裏側で摩擦させて出します。
/j/
の合体
他の英語圏でもみられますが、アイルランド英語においても
/tj/
や
/dj/
の子音が口蓋化することで、2つの子音が
/ʧ/
や
/ʤ/
に合体する
/j/
の合体 (
Yod-coalescence
)
という現象がみられます。
例)
tu
ne、
du
ne
単語
アイルランド英語
アメリカ英語
イギリス英語
tune
/ʧ
u
n/
/tj
u
n/
/tj
u
n/
dune
/ʤ
u
n/
/dj
u
n/
/dj
u
n/
アルファベットの発音
他の国の英語に比べてアルファベットの呼び方が異なるという特徴があり、「
H
」は「エイチ」ではなく「ハイチ」と呼ぶのが一般的です。また、「
R
」は「アール」ではなく「オール」、「
A
」は「エイ」ではなく「アー」、「
Z
」は「イーゼッド」と呼ばれることもあります。