子音の変化について (2)
Last update December 26, 2024
地域差に表れる子音の変化 (2)
明るい
/l/
と暗い
/l/
(
Light /l/ and dark /l/
)
厳密には
/l/
の音には、明るい
/l/
(
light /l/
) と暗い
/l/
(
dark /l/
) があり、
l
ight
や
l
isten
などの語頭や
on
l
y
など子音の後に続く場合の
/l/
を明るい
/l/
で、それに対して、
fu
ll
や
poo
l
など母音の後に続く
/l/
を暗い
/l/
で発音するのが基本です。
両者の違いは舌の盛り上がり方にあります。「明るい」ほうは舌の後部の盛り上がりがないため軽い音になりますが、「暗い」ほうは、舌の後部が盛り上がり軟口蓋に接近するため、こもった音になります。舌先は「明るい」ほうは歯茎の裏側に来ますが、「暗い」ほうは歯の裏側あたりに来ます。イギリス英語では両者を区別していますが、アメリカ英語やオーストラリア英語、ニュージーランド英語、スコットランド英語では、その位置に関係なく、すべて暗い
/l/
で発音し、アイルランド英語では明るい
/l/
で発音される傾向があります。
「
l
」の母音化 (
L-vocalization
)
語尾にくる
/l/
の音が母音化し、
/w/、/o/、/ʊ/
などに近い音で発音される現象です。その前にくる母音が同化する例が多くみられ、
real、reel、rill
などがいずれも
/rɪw/
のように発音されます。コックニーやエスチュアリ英語、ニュージーランド英語、あるいはアメリカのニューヨーク、ピッツバーグ、フィラデルフィア英語でみられます。ただし、次に続く単語が母音で始まり、続けて発音される場合にはこの現象は起こりません。
「
l
」の脱落 (
L-dropping
)
上の
「
l
」の母音化
とも関連して
/l/
の音が脱落する現象で、アフリカ系アメリカ英語やサンフランシスコのアジア系アメリカ英語などにみられます。
pleasure
と
pressure
の同化 (
Pleasure–pressure merger
)
ホンコン英語にみられる特徴で、
/ʃ/
と
/ʒ/
がいずれも
/ʃ/
で発音されるため、
pleasure
と
pressure
が韻を踏むことになります。
let
と
net
の同化 (
Let–net merger
)
ホンコン英語にみられる特徴で、音節の最初にくる
/l/
と
/n/
の発音が区別されないため、
let
と
net
などが同音になります。
pit
と
fit
の同化 (
Pit–fit merger
)
フィリピン英語にみられる現象で、
/f/
と
/p/
がいずれも
/p/
で発音されるため、
pit
と
fit
が同音になります。
「
r
」の歯茎ふるえ音化 (
Alveolar trill
)
スコットランド英語によくみられる特徴で、
/r/
の音を舌をふるわせて出す巻き舌 (
R-rolling
) で発音します。
「
r
」の歯茎はじき音化 (
Alveolar flap
)
スコットランド英語やアイルランド英語にみられる
/r/
の発音方法で、歯茎に舌をたたきつけて出します。もともとはイングランドの発音法であり、今でもヨークシャー北部の英語やリバプールの若い話者たちの間でみられます。
「
r
」の口蓋垂音化 (
Uvular trill
)
/r/ の発音方法で、口蓋垂(のどひこ)をふるわせて発音します。フランス語などで使われますが、英語ではアイルランド英語の一部をのぞいてほとんど使いません。