イギリス英語の発音 (3)
Last update December 28, 2024
基本的な特徴 (1)
音節語尾の母音の後の「
r
」は発音しない (
non-rhotic
)
まず、アメリカ英語の発音が音節の末尾に来る母音の後の「
r
」のスペルを発音する
rhotic
であるのに対して、イギリス英語では、そういった「
r
」のスペルは基本的には発音しないという
non-rhotic
(ノン・ロウティック)
の発音になります。よって、
father
と
farther
、
caught
と
court
、
formally
と
formerly
などが同音となります。また、この「
r
」のスペルを発音しないということから、
「
linking R
(つなぎの
R
)」
や
「
intrusive R
(侵入の
R
)」
といった現象が起こります。
明るい
/l/
と暗い
/l/
の使い分け
他の英語圏とは異なり、イギリス英語では、明るい
/l/
と暗い
/l/
を使い分けています。これら2種類の発音については、
明るい
/l/
と暗い
/l/
(
Light /l/ and dark /l/
)
をご覧ください。
/j/
の脱落
イギリス英語においても
/j/
の脱落 (
Yod-dropping
)
がみられますが、アメリカ英語のように広範囲には及ばず、
/s/
および
/l/
の後のみです。したがって、
new
、
duke
が「ヌー」や「ドゥーク」になることはありませんが、
pursuit
や
evolution
では
/j/
を発音する話者もいますが、
/j/
が脱落して「パスート」、「イヴォルーション」と発音する話者もみられます。ちなみに、
suit
という単語では「スート」が一般的で「シュート」と発音する傾向はほとんどみられません。
/t/
の声門破裂音化
アメリカ英語同様、
/t/
の声門破裂音化 (
T-glottalization
)
という特徴がイギリス英語でもみられ、
depar
t
ment
のように子音の前にくる
/t/
の発音が影響を受けるのが一般的ですが、最近の若い世代では、
pick i
t
up
や
wha
t
など、母音の前や語尾の
/t/
にもこの傾向がみられます。
長母音の特徴
アメリカ英語に比べて短母音と
長母音(『英語雑貨屋―英語の発音』)
(
/iː/
など)の長さが明瞭です。長く伸ばすというよりは、むしろ、
/ɪi/
のように二重母音的に発音される傾向があります。
この長さの区別はあくまでも相対的なもので、その前後の発音にも影響されるため、長母音であっても、
/p/
、
/t/
などの強い張り詰めた音(
fortis
)の後に来る場合は短くなる傾向があり、逆に短母音であっても、
/b/
、
/d/
などのゆったりした弱い音(
lenis
)の後に来る場合は長くなる傾向があります。
二重母音の特徴
アメリカ英語では
/oʊ/
と発音される二重母音が、イギリスでは
/əʊ/
のように発音されます。
例)
b
oa
t
、
c
oa
t
単語
イギリス英語
アメリカ英語
boat
/b
əʊt/
/b
oʊt/
coat
/k
əʊt/
/k
oʊt/