Oxford comma と生ずる誤解について (1)
Oxford comma を使うか使わないかは、単なる好みでればどちらでもいいわけです。ところが困るのは、それによって誤解が生じる場合です。具体的にどんな誤解が生まれる可能性があるのかを考えてみましょう。
その二人は両親なのか?
次の例は Oxford comma が入っていない文章です(ネット上のサイトから借用)。
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(Gratitude) To my parents, Mother Teresa and the pope. (1)
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I love my parents, my dog and my cat. (2)
これらの文章をじっくり読むと、Mother Teresa や the pope、あるいは my dog と my cat が my parents だという意味にも取れますね。もちろん、事実としてはあり得ないので、実際に誤解が生ずる可能性は低いのですが、良い表現とは言えません。
これに、Oxford comma を入れて
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(Gratitude) To my parents, Mother Teresa, and the pope. (3)
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I love my parents, my dog, and my cat. (4)
とすると、上記のような誤解は発生しませんね。
しかし、重箱の隅をつつくようですが、(3) の my parents の部分が、母しかいないということから my mother になったとするとどうでしょう?
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(Gratitude) To my mother, Mother Teresa, and the pope. (5)
Oxford comma を入れているだけに、今度は my mother と Mother Teresa が「同格(apposition)」になってしまいます。
じゃあ、Oxford comma を削除すればいいのかということになりますが、まあ、削除すれば my mother が Mother Teresa だという誤解は発生しないでしょう。
しかしながら、最初に挙げた例も含めて、スタイルガイドなどでは、あいまいさを100%無くすための書き換えを奨励しています(だいたい、my parents や my mother をわざわざ、Mother Teresa と the pope より先に持って来る必要性もないわけです)。
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(Gratitude) To Mother Teresa, the pope(,) and my parents (my mother). (6)
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I love my dog, my cat(,) and my parents. (7)
こうしておけば、Oxford comma を使う・使わないにかかわらず、意味の取り違えは出てこないでしょう。
ただし、(7) の場合ですが、犬や猫が両親の前に置かれるのはちょっと抵抗がありますね。人間が動物以下などという印象を与えてしまうかもしれません。やはりここは、ちょっと表現の工夫が必要になってきます(もっとも、正式なライティングで、(7) のような内容を記述することはまずないと思いますが)。
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I love my parents and pets, including a dog and a cat. (8)
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I love my parents and even my dog and cat. (9)
といった言い換えができそうです。
上記の例をもう少し掘り下げてみると、Mother Teresa や the pope であれば、あり得ない話なので誤解はないのですが、次のような一般的な名前であれば、誤解の可能性は高くなってきます。
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I want to dedicate this book to my parents, Tom Brown and Kate Smith. (10)
これこそ、Tom Brown と Kate Smith が my parents である可能性はますます高まってきます。「だって苗字が違うじゃん」ということもあるかもしれませんが、最近の世の中では、離婚している可能性大です。
この場合も、少なくとも、Oxford comma を入れてやるか、もしくは、全く誤解の余地がないように書き直すのがいいでしょう。
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I want to dedicate this book to Tom Brown, Kate Smith, and my parents. (11)
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I want to dedicate this song to my parents, Tom Brown and Kate Smith, my friends. (12)
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