アメリカ英語だけが英語じゃない (1)

       


Last update December 19, 2024

未知の英語(?)との遭遇

私が英語を勉強し始めたのは中学生からでしたが、学校のテキストもアメリカ英語、お世話になったテレビやラジオの英語講座の講師もほとんどがアメリカ人、発音の影響を受けた交換留学生もアメリカ人という「アメリカ英語」づくしでした。当然のことながら、私の英語もアメリカ英語でした。

大学卒業後、英文ライティングの仕事を始めますが、チェックを依頼するネイティヴライターも、アメリカ人がほとんどでした。なかには、イギリス人もいましたが、Cockney EnglishEstuary English ではなく RP に近いイギリス英語を話していましたし、その後、オーストラリア人と仕事をすることもありましたが、オーストラリア特有のアクセントはなくコミュニケーションに困ることはありませんでした(日本に来て英語を使って仕事をしようという人たちはわかりやすい英語を話してくれます)。

標準的な英語以外に触れて何が困るかというと、当然のことながら、「相手の言うことがわからない」ということですね。初めてそんな苦い経験をしたのは、学生時代のアルバイトでのことです。

国際見本市でアテンドをしていたときに、ブースにやってきたマレーシア人の英語が何を言っているのかさっぱりわからない。こちらが聴き取れず苦労していると、「なんだ、あんた英語わからないじゃないか」のような態度を取られてしまいます。ここら辺、謙虚な日本人(?)とは異なり相手は強気なので、間違っても、「自分の英語がわかりにくいのかな?」といった考えには至らないようです。

もちろん、そういう人ばかりではなく、観光ツアーのアテンドのアルバイトで知り合ったニュージーランドの女性や仕事でいっしょだったオーストラリア人女性の友人(アイルランドだったか、ウェールズだったか、スコットランドだったかは覚えていない)などは、きちんと気配りができるというか、自分たちの英語には独特のアクセントがあり、わかりにくのではないかという想像力が働いていたようです。

ともあれ、最初の会社では、前述のように、標準英語を話す人たちばかりだったので、仕事のうえで、「英語の違い」を意識することはほとんどなかったわけです。

それを意識するようになったのは、(今でいう「ブラック企業」だった)最初の会社を辞めて二番目の会社に入ったときです。

オーストラリア英語がわからない

さて、転職となり、だんだん英文ライティングが面白くなっていた時期でもあったので、できればそれを専門にキャリアを積んでいきたかったのですが、残念ながら、日本人で英文ライターになりたいと思っても、まずチャンスがありません。そういう職種もなければ、募集している会社もないのです(現在は、独立して個人事業主として英文ライターをやっています)。仕方がないので、英文を書くことも含めて、英語に関するもろもろの業務をさせてもらえそうな会社に入社しました。

入った会社は100人程度の小さな会社で、自分の他に英語がわかる人間はほとんどいません。とにかく、英語に関するいろんな仕事が回ってきます。言ってみれば、「英語の何でも屋」ですね。なかでも極めつけだったのが、クライアントである企業がモータースポーツに参加していて、そのオーストラリア人ドライバーやメカニックたちとのコミュニケーションでした。

私のいる業界は、企業の広告やプロモーションに関する業界で、クライアントである企業のさまざまなお手伝いをするのも業務の一つです。ということで、ちょっとした通訳を頼まれることもあるのですが、もちろん、契約に関することなどのヘビーな内容ではなく、プロモーション用のインタビューや情報交換などでした。しかし、それでも大変な思いをしました。

なにしろ、日本に英語を教えに来ている人たちではないので、「標準的な英語」など知らない(必要ない)のです。手加減なしに登場するオーストラリアアクセント。racerice になるし、taketike になる… うわさに聞いていたオーストラリアなまりを初めて体験したのです。おまけに、「キミの英語はほんとにアメリカンだね」などと言われたり、自分の世界の狭さを感じました。