英語の落とし穴?!either side は「両側」なのか? (1)

       


Last update January 13, 2025

 either side には要注意!

英語を外国語として使う日本人にとって、either side と言えば、both sides との対比も含めて、次のような前提があったはずです。つまり、A sideB side を両側として…

-- 意味 図式
either side 両側のうちのどちらか一方の側 A or B
both sides 2つの側を含む両側 A and B

というわけですね。

それが、実際には、either sideboth sides の意味ではないかと思われる用例に出くわすことがあります。

たとえば、次のような文章です。

  • There are trees on either side of the road. (1)
  • The attachment is provided on either side of the unit. (2)

もちろんこれは、英語が母国語でない外国人が書いたものではなく、英語のネイティブが書いた文章です。そして、いずれも「両側(どちらの側も)」の意味で使われています。

日本人である私たちが同じ内容を英語で表現しようと思えば、on either side ではなく on both sideson each sideを使うはずなので問題ないのですが、逆に、英語で書かれた文書などを読むときに、このような文章があると戸惑ってしまいます。

とくに、(2) のような文章になると、製品マニュアルなどにも登場しそうな文言であるため注意が必要です。attachment が両側にあるのか、どちらかの片側にあるのかによって、その商品や部品を使って設計をする場合などに大きく影響してきます。

英語のマニュアルをもとに日本語版を制作する場合なども、原文の翻訳を元にして作成しますので、間違って理解してしまうと大変です。

原文の英語文書もプロのテクニカルライターが書いているとは限りません。一般の担当者が書いている場合もあり、つい自分が普段使っている英語表現がもとになってしまいます。しっかりとしたスタイルガイドに沿って書かれているとは限らないので、「原文の英語は完ぺきではない、不適切な表現もある」ということを頭のどこかに置いておく必要があります。

 either side には both sides の意味があるのか?

ではなぜ、either side で「両側」を表そうとするのか、その用法自体正しいのかという点について考えてみたいと思います。

結論から言うと、脈絡によって「両側(どちらも)」の意味を表すことがあるということです。

もっとも、「両側」というより「どちらの側も」と表現したほうが正確だと言えます。英和辞典などでも、説明項目の3番目くらに「sidehand などを伴って、どちらの~も」といった説明がさりげなく書かれていたりするのですが、そこまで辞書を読み込んでいる人も少ないのではないかと思います。

また、「脈絡によって」というところがクセモノで、逆に言うと、脈絡によって「両側(どちらも)」の意味にならない(片側のみを表す)場合もあるわけです。

たとえば、次のような例が挙げられます。

  • You can park your car on either side of the road. (3)
  • You can sleep on either side of the room. (4)

「車を止める」とか「寝る」といった脈絡なので、「どちらでもいい片側」という意味になりますね。車を道路の両側に同時に止めることはできないし、部屋の両側に同時に寝ることはできないからです。これは脈絡によって、「両側」なのか「片側」なのかが明白です。

ところが次のような場合はどうでしょう?

  • Please write down your name on either side of the notebook. (5)

学校などで、ノート一冊まるごと提出といった場合ですが、自分の名前は表裏のどちらかに書いておけばいいのか、それとも両方に書くのか、紛らわしいですね。

ちなみに、否定形になると、「どちら側にも名前を書くな」という意味になるのでわかりやすいのですが。

  • Please do not write down your name on either side of the notebook. (6)

というわけで、どうもスッキリしない悩ましい either side なのですが、「両側」の意味でこれを使うのは大半が informal なシーンにおいてです。

つまり、日常的な表現における使い方であり、企業などから発信される正式な文書では使わないのが普通です。製品マニュアルなども formal な情報なので、心得のあるプロのライターが担当するとか、きちんとしたスタイルガイドに沿って制作するのが望ましいと得います。

しかし、いかんせん、小さな組織になるとそうも言っていられません。前述のように、担当のおにいさんやおねえさんなどが、日常表現を使ってちゃっちゃっと作ってしまったりすることも多いわけでしょう。

しかし、それを読む解く側としては、注意して読解する必要があるということです。

以上、まとめてみると

either side は、脈絡によって、informal なシーンで「両側(どちらも)」の意味でよく使われるが、formal なシーンで「両側」という肯定文においては、誤解を避けて、both sideseach side を使うべきである
と言えます。

次のページでは、なぜ either side が「両側(どちらも)」の意味で使われるのか、その意味での either sideboth sides は全く同じなのか、といった疑問についてまとめています。