ニュージーランド英語の特徴 (1)

       


Last update January 4, 2025

ニュージーランド英語は、19世紀の移民によってもたらされたもので、世界の英語のなかでも最も新しい英語と言えます。地理的に近いことから、最も影響を受けているのがオーストラリア英語ですが、それ以外にも南イングランド、アイルランド英語、スコットランド英語、イギリス英語の RP (Received Pronunciation)、さらに先住民であるマオリ族の言語(マオリ語)の影響もみられます。

 口の開け方が小さい

ニュージーランド英語の大きな特徴のひとつは、その母音の発音にあり、全体的に、他の地域の母音と比べると、口の開け方が小さくなる傾向があります。なかでも、/ɪ/ の発音がほとんど聞こえないくらいのあいまいな音で発音されるため、本国イギリスの代表的なスナックである fish and chips が「f'sh and ch'ps」のように聞こえてしまいます。これは、スコットランド英語や南アフリカ英語にもみられる特徴ですが、そのため、ニュージーランド人が fish and chips と言うと、オーストラリア人にとっては「フシュ・アンド・チュプス」のように聞こえ、逆にニュージーランド人の耳には、オーストラリア人の発音は「フィーシュ・アンド・チープス」のように間延びして聞こえるのだとか。

地域による発音の違いとは紛らわしいもので、とんだ誤解を招くこともあるようです。たとえば、ニュージーランドでは thought などの母音 /ɔ/ の発音が、標準発音より口が丸まって /o/ の音で発音されるため、ニュージーランドの Auckland とアメリカの Oakland がほぼ同音になってきます。そこで、発生したのが、Oakland に行くはずだった乗客が、Auckland に行ってしまったというウソのような本当の話もあるようです。

そういう発音の違いをまとめてみると、以下のようになります。

標準英語 ニュージーランド英語 聞え方
i (ɪ) 弱い u fish → f'sh (フシュ)
chips → ch'ps (チュプス)
e (ɜ) i bed → bid (ビッド)
egg → igg (イッグ)
æ e cat → ket (ケット)
mat → met (メット)
u pool → pull (プル)
fool → full (フル)
ei tree → tray (トレーイ)
see → say (セーイ)
əː bird → burd (ブード)
nurse → noose (ヌース)


というわけで、朝「ビッド」から起きて、朝食には「イッグ」を食べる。居間では「ケット」が「メット」の上で寝そべっている。家を出るときは「レップトップ」か「テブレット」を忘れずに… といった感じになってしまうわけですね。

 独特の抑揚

ニュージーランド人の話し方の特徴として、語尾を上げるという傾向が挙げられます。

これは、疑問文はもちろんですが、その答えになる文章や、平叙文でも見られるようですが、専門的には high rising terminal と言います。その心理としては、相手に尋ねているというのではなく何らかの強調を表したいという意志が働くのだか。この語尾を上げる傾向は、オーストラリア英語にもみられるようです。

余談ですが、関西人の話し方もそうですね。「やらせてもらいます」などと言うときの最後の語尾が上がるので、他の地域の人からみると「なんでそこ上がるの?」と思うかもしれませんが、長年関西に住んでいると妙にこれが心地よく、「やらせてもらいます」と下げられると、「機嫌悪いのかな」と思ったり、なんだか落ち着かないものです。

そういう意味では、非常に親近感を感じるのが、質問の答えの語尾を上げるニュージーランド人のイントネーションというわkです。

 it の代わりに she

gender(性的差別)が云々される前の英語の世界では、性別を問題にしない「人間」を表す名詞の代名詞は he でした。「人類」を表す名詞も man でしたが、今ではそういった用法はNGとなっており、「人類」は human、性別不明(問題にしない)の場合は he or she あるいは、単数複数に関わらず they を使います。

ところが、ニュージーランドの口語では、代名詞 it の代わりに she を使う傾向があるようです。ここでは女性のほうが強いのか、それとも女性は「モノ」扱いなのか、その歴史的な背景についてはわかりませんが、特に文章の頭に it が来る場合に she が使われる傾向があり、"She'll be right" というと "It will be okay" というわけです。

 語尾に eh! をつける

語尾に "eh!" をつけるのもニュージーランドの話し言葉の特徴のひとつです。この eh はイギリス人などが付加疑問文の代わりとして使う "eh?" とは異なり、「強調」を意味すると言われ、マオリ語の音節 e が語源となっています。さしずめ、シンガポール英語の OK-lah など、語尾に中国語源の lah をつける傾向と似たものがあるのかもしれません。

 感嘆詞の Choice!

また、ニュージーランドでは、"Great!""Good idea!" などを意味する感嘆詞として "Choice!" という言葉がよく使われます。また、Too much というと「程度が甚だしい」というよりは Good、Great、Very pleased の意味になるようで、まさに、言葉の選び方がグッドチョイスなのかもしれませんね。