ニュージーランド英語の発音 (1)

       


Last update December 29, 2024

一般的な傾向と特徴

ニュージーランドは、カナダやオーストラリアと同様、イギリス連邦(The Commonwealth of Nations)のメンバーです。地理的にもオーストラリアに近いことから、オーストラリア英語の発音の特徴と非常に似ています。

とは言え、微妙な違いもあり、その1つとして挙げられるのが、第二次大戦後特に顕著になった「i」の音の違いがあり、ニュージーランド英語の「i」の発音は、弱くあいまいな音になります。下の母音(単母音)イメージ図をご覧いただけばわかりますが、他の国の英語にみられる短母音の /ɪ//i/ の発音は /ɘ/ の音で発音され、長母音としての /iː/ があるだけです(二重母音には /iə/ の音があります)。

では、さっそくニュージーランド英語の発音の特徴を見てみましょう。

ニュージーランド英語の母音

 ニュージーランド英語の単母音

ニュージーランド英語の母音を口の大きさと舌の位置を軸にマッピングすると下図のようになります。


口の大きさと舌の位置
 狭母音(せまぼいん)close vowel   半狭母音(はんせまぼいん)close-mid vowel   半広母音(はんひろぼいん)open-mid vowel   広母音(ひろぼいん)open vowel   前舌母音(ぜんぜつぼいん)front vowel   中舌母音(ちゅうぜつぼいん)central vowel   後舌母音(こうぜつぼいん)back vowel 

マップ上の左右方向は、舌の前後の位置を表し、左から右にいくにつれて舌の位置が前→後ろへ移動します。マップの上下は、口の開け方の大小を表し、上から下にいくにつれて、口の開け方が大きくなります。それと同時に、舌の前後の位置も、上→下へと移動します(口を閉じたときは自然に舌が上の位置にあり、大きく開けたときは下の位置に来ます)。

たとえば、母音 /i:/ の発音は、口の開け方が狭く舌の位置が前にある状態で出てくる音であり、/o:/ は口の開け方は小さめ(半狭母音)で舌の位置が後ろのほうにある状態で発音される音ということになります。

このマッピングは、どこの国の英語も同じではなく微妙に異なります。それによって、各国の英語の音の違いが出てくるわけです。

 ニュージーランド英語の二重母音

二重母音 /æe/ /ɐe/
単語例 face price
二重母音 /oe/ /ɐʉ/
単語例 choice goat
二重母音 /æo/ /iə/
単語例 mouth near
二重母音 /eə(iə)/ /(j)ʉ.ɐ/
単語例 square cure

以上、ニュージーランド英語の母音について見てみましたが、少し補足をしておきます。

●「単母音マッピング」の中には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれていますが、黒い文字でかっこ書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。

●たとえば、/ʉː//ɵː/ は、辞書の表記ではそれぞれ、/uː//əː/ の表記になりますが、実際の発音では、それらより舌の位置が前に来たり、口の開け方が小さくなります。

●「a」を逆さにした /ɐ//a/ の発音よりも舌の位置が中央に引き、口の開け方が小さくなります。

●最初の説明にあるように、/i//ɪ/ の音は、口の大きさを小さめに半分くらい開け、舌の前後の位置を中央に置いて発音する /ɘ/ の音になります。

●また、長母音の /iː/ の矢印は、舌の位置が矢印の方向に変化することを表しており、その意味では二重母音と捉えることができます。