オーストラリア英語の発音 (1)

       


Last update December 29, 2024

一般的な傾向と特徴

カナダやニュージーランドと同様、イギリス連邦(The Commonwealth of Nations)のメンバーであるオーストラリアは、18世紀末にイギリスの流刑地として移住が始まりました。しかし、移民していった人々は受刑者ばかりでなく、テムズ川の(River Thames)の北部、イースト・エンド(East End)地域を起源とするコックニー(Cockney)と呼ばれる人々も含まれており、それに加えていろんな国や地域から移民してきた人々によって国家の基盤が形成されていきました。

なかでも、アクセントにおいてはコックニーの影響が強く、あの独特なオーストラリア英語の特徴は、すでに、19世紀初期の現地生まれの人々の話し方として定着していたようです。

オーストラリア英語の母音

 オーストラリア英語の単母音

オーストラリア英語の母音を口の大きさと舌の位置を軸にマッピングすると下図のようになります。


口の大きさと舌の位置
 狭母音(せまぼいん)close vowel   半狭母音(はんせまぼいん)close-mid vowel   半広母音(はんひろぼいん)open-mid vowel   広母音(ひろぼいん)open vowel   前舌母音(ぜんぜつぼいん)front vowel   中舌母音(ちゅうぜつぼいん)central vowel   後舌母音(こうぜつぼいん)back vowel 

マップ上の左右方向は、舌の前後の位置を表し、左から右にいくにつれて舌の位置が前→後ろへ移動します。マップの上下は、口の開け方の大小を表し、上から下にいくにつれて、口の開け方が大きくなります。それと同時に、舌の前後の位置も、上→下へと移動します(口を閉じたときは自然に舌が上の位置にあり、大きく開けたときは下の位置に来ます)。

たとえば、母音 /i:/ の発音は、口の開け方が狭く舌の位置が前にある状態で出てくる音であり、/o:/ は口の開け方は小さめ(半狭母音)で舌の位置が後ろのほうにある状態で発音される音ということになります。

このマッピングは、どこの国の英語も同じではなく微妙に異なります。それによって、各国の英語の音の違いが出てくるわけです。

 オーストラリア英語の二重母音

二重母音 /æɪ/ /ɑe/
単語例 face price
二重母音 /oɪ/ /əʉ/
単語例 choice goat
二重母音 /æɔ/ /ɪə/
単語例 mouth near
二重母音 /e/ * /(j)ʉ.ə/
単語例 square cure
* 厳密には二重母音とは言えませんが、他の英語圏との比較のため、ここに表記しています。

以上、イギリス英語の母音について見てみましたが、少し補足をしておきます。

●「単母音マッピング」の中には、英和辞典でも見慣れない発音記号が含まれていますが、黒い文字でかっこ書きで、通常辞書などで使われている表記を記しています。

●たとえば、/ʉː/ は、アメリカ英語などではみられません。辞書の表記も /uː/ になっていますが、厳密には /u/ よりも舌の位置が前方に来ます。

●また、/ɜ/ も通常は /ə/ で表記されます。